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コラム

第二十回「エタニ電機とのコラボ・セミナー」

極!石田塾

2020.12.05

11月29日、コルトレーンでエタニ電機とのコラボ・セミナーがあり参加してきました。今回は、現場に来られなかった人のためにもその様子をお伝えしましょう。

新型コロナウイルスの陽性者が急激に再拡大していたので果たして開催していいものかとも考えましたが、検温や手指の消毒、マスク着用などを徹底していれば感染は防げるだろうということで開催に踏み切った今回のセミナー、結果的には大成功で終了しました。このETANI ONEというDSP+デジタルプレーヤーのことは、亡くなった先代の社長の頃から何度も取材していて知っていたつもりでしたが、先代社長が感覚的に話しをすることもあって細かいところは謎の部分もあったんですね(笑)。それを新社長の鈴木さんが噛み砕いて丁寧に説明してくれたため、謎の部分は解消。あらためて凄さがわかったわけです。

当日は11時から1回め、15時から2回めのセミナーが行われましたが10時前にコルトレーンに着いた頃には気の早いお客さんが集まり始めていました。実は前日、軽く打ち合わせをした時に「デモ機の音がパッとしない」という話を聞いていて、じゃあ始まる前に
スピーカーのセッティングを見直そうという事になったんですね。だから早く来たお客さんにはそのへんの事情もバレバレでした(笑)。それにしても滋賀県から来たお客さんや中には東京から来たお客さんもいて、遠方からの来訪者が多かったのは驚きました。なかなか音を聴く機会が少ないため、興味を持っている人が多かったのがわかります。

さて1回め。参加者は10名ほどでしょうか。ソーシャルディスタンスをとって椅子を並べていたため、ほぼ満席です。コロナ禍により事前の打ち合わせがほとんどできなかったこともあり、資料はいただいていたものの、ほぼぶっつけ本番。最初から、難しい話はすべて鈴木さんに振ろうと決めていたものの、話を聞いている途中で理解することも多く、僕もより深くETANI ONEを知ることができた感じです。

今回改めて気づいたのはWave EQの凄さ。位相まで補正することは知っていたものの、車載用ならともかくホーム用スピーカーなら完成品だから位相補正が効いたとしてもわずかだろうと思っていたんですね。それが大きな間違いだということがはっきりわかりました。

というのも、スピーカーには構造上、周波数によって位相が変化するポイントがいくつもあるんですね。例えば位相は角度で表しますが100Hzが0度だったとしても1,000Hzは90度だったり5,000Hzは180度だったり。この、同じスピーカーでも周波数によって位相が変化するのがやっかいなところで、これを補正して全周波数で位相が0度に近い状態に戻すため、スピーカーの性能をより引き出しやすくなるわけです。

その違いは聴けば一聴にしてわかります。デモに使ったのはお店にあったディナウディオのホーム用スピーカーで、補正前でもなかなか良い音を奏でていたのですが、Wave EQの補正後は全体的に音が柔らかく聴きやすくなります。そして音像がより明確になるし、埋もれていた小さい音がはっきりと聴きとれるようになって、情報量も格段に上がります。これが同じスピーカーなのかと驚くほどの変わりようです。

それは使っているFIRフィルターのタップ数でもわかります。カロッツェリアXのDSPに搭載しているFIRフィルターのタップ数も相当頑張っていて40kタップなんですが、ETANI ONEはその6倍の240kタップ。このようなきめ細かいステップで調整を行うため、位相を整えた再生ができるわけです。

ホーム用スピーカーでもこうなのだから、車載だとより違いがわかります。今回はお客を優先して試聴してもらっていて、ひとりひとりの試聴時間が思いのほか長ったので、残念ながら僕が聴く時間はとれなかったのですが、その長さを考えても良い音だったのでしょう。音が悪かったら、おそらく長く聴くきにはならないと思いますから。以前、どこかで聴いた時はずっと聴いていたくなるような心地良いサウンドでした。

調整自体も思いのほか簡単で、最初のクロスオーバー設定だけはマニュアルで行いますが、その後は視聴位置に専用のマイクをセットしてiPadにインストールしたアプリを操作し7~8分待つだけ。その間に測定と補正データの作成、確認を繰り返して音を仕上げていくわけです。具体的には周波数特性が-3dBの周波数があったなら+3dBに補正を加え、位相が+30度のポイントがあれば-30度の補正をかけるわけですね。このようにして周波数特性も位相も整えていくわけです。

面白いのは位相ズレが構造的に発生しないといわれているカロッツェリアのCSTドライバーでも補正をかけることでより位相のあったクリアなサウンドが楽しめるということ。今回は試していないのですが、某ショップでCSTドライバーにサブウーファーを組み合わせただけのシステムで試してみたところ素晴らしい音がしてエタニのスタッフも驚いたそうです。

カロッツェリアのCSTドライバーを始めとして、位相の重要性が再認識されている昨今、デジタル技術によって位相をコントロールしようというETANI ONEはオンリーワンの製品です。こんな製品はホーム用のハイエンド機器にも存在していません。という意味ではETANI ONEのバナーに書かれていた「ホームオーディオを超えるサウンドを車内で」というような意味の文言も、大げさじゃないことがわかります。

すべてがフラットならいいのかという意見もあるし、フラットがすべてじゃないこともわかります。というのも、実際にフラットな特性でつまらない音になっているケースは多々あるからです。が、ETANI ONEの場合はフラットに整えたうえでパラメトリックEQで独自の色をつけたり、定位の高さを調整したりといろんなセッティングがあとから可能。このあたりはショップの腕の見せどころでしょう。

1回目は少しあたふたしたところもありましたが(笑)そこでいろいろ勉強したため、2回目はわりとスムースに進み、質問コーナーでもいろいろと質問が飛び交いました。もちろん答えはすべて鈴木さんにおまかせです(笑)。その中で、良いのはわかったけどもっと安いモデルを出すつもりはないのかという意見がありました。

確かに88万円は高いです。が、亡き前社長がまさに命がけで作った世の中で一つだけのモデルです。また会社の規模を考えると、普及価格のモデルを出して生産量を増やすのは、かなり難しいでしょう。それでもETANI ONEがブレイクして需要が大きく増えれば、普及モデルも考えたいと話していましたが現時点ではETANI ONEがオンリーワンです。

個人的にはこれをカーオーディオだけで楽しむのはもったいないので、レコーディング・スタジオなどのプロの現場で活躍してほしいとも思っているのですが、そんなプロ用の測定器メーカーが初めて一般用に、しかもカーオーディオ・フリークに向けて作った製品を一度何かの機会に聴いてほしいものです。

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