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コラム

第二十三回「カーオーディオ・コンテスト」

極!石田塾

2021.03.13

愛知や岐阜、関西の3府県、そして福岡の緊急事態宣言が解除され、各地でのカーオーディオ・イベント開催の声もぼちぼち聞こえ始めてきました。今まで自粛して家にこもっていたので、イベントが待ち遠しく楽しみにしていた人も多いと思います。まずは4月25日、大阪・堺浜でのまいど大阪「春のプチ車音祭」。続いてヨーロピアンサウンド・カーオーディオ・コンテストは5月16日の西日本会場(あじさいフローラみき駐車場)と6月13日の東日本会場(常総市地域交流センター東側駐車場)の2カ所にわけての開催です。

個人的には、マスクの装着、 手指の消毒、室内のこまめな消毒、体温が高い場合は参加しないなど、感染防止対策をしっかりと行えばイベントの開催はOKだと考えています。同じ趣味を持つ仲間が一カ所に集まって、お互いのクルマを聴きあったり話したりする機会は滅多にないので、感染にはくれぐれも気をつけた上で、どんどんイベントを開催して欲しいものです。

ただし、僕自身はコンテスト形式のイベントは苦手です。というのは、ひとつの基準で順位をつけるというのが、どうにも納得できないのです。音楽を聴くという行為は、あくまでも個人の趣味のもの。ジャズが好きな人もいればロックが好きな人もいます。またアニソンが大好きな人もいればクラシックしか聴かないという人だっています。

好みの音の傾向もさまざまで、解像度がバリバリに高くて再生レンジも広いモニター的な音が好きな人もいれば、再生レンジがナローでも中域が厚くて聴き心地のいい音が好みの人もいます。このように音楽はジャンルも音の好みも多種多様。聴いている本人が「これがサイコー!」と思えれば、他人に何を言われようが一番だと思うんです。だから、ひとつの基準で採点して順位付けするのは不要で、個人の自由で好きに音楽とオーディオを楽しんでいいと思うのです。

思えば、このようなコンテスト形式のイベントは、アメリカ発祥のIASCA(アイアスカ)が最初だったと思います。あのイベントは音圧を競うSPLがあったり、RTAでフラットな周波数特性に高得点が与えられたりと数値で判断する部分もあって、競技好きのアメリカ人にはぴったりのイベントだったと思います。

純粋に音で勝負するイベントはパイオニア・カーサウンド・コンテストが始まりだったと思います。このコンテストは全国のカーオーディオ・ショップのインストールやチューニングの技術力向上を目的としてスタートしたもので、長野の斑尾で行われた第1回目はわずか20数台の参加台数だったと記憶しています。その後、静岡のつま恋に場所を移してから回数を重ねるうちに参加台数がどんどん増え、千葉・幕張で開催した時には一般参加も可能になり、200台を超えるほどの文字通り日本最大のカーオーディオ・コンテストとなったわけです。

このコンテストは、ショップのインストールやチューニングの技術力向上に大きく貢献したと思います。第1回目はDSPの使いかたに慣れていないショップも多かったのか、出音の差は歴然。札幌のサウンドラボのようにそれまでクルマの中では聴いたことのないような素晴らしい音を出しているクルマもあれば、位相がぐちゃぐちゃで室内にいると気持ち悪くなるクルマもあったりして…(笑)。余談ですが、僕はサウンドラボのデモカーを聴いた後「自分のクルマを頼むならココしかない」と思い、フェリーで北海道へ渡ったほどです。

話を戻します。最初の頃は技術力の差があって出音の差も大きかったコンテストですが、回を重ねるうちにボトムアップしてきて、出音の違いが小さくなっていきました。これこそが、当初のパイオニアが目指したもの。コンテストを重ねるうちにショップ間の交流や情報交換が進み、その中でインストール技術やチューニング技術を教え合うことでショップ間の技術力の差が縮まるし、全体的なレベルアップにもつながったわけです。

様子が変わってきたのは、一般参加が可能になってから。参加台数が200台を超え、文字通り日本最大級のカーオーディオ・コンテストになったわけですから、このコンテストで1位をとれば日本一と考える人も増えたのでしょう。順位を気にする人が、ものすごく増えたような気がします。

僕がジャッジを担当していたエムズライン・カーハイファイ・ミーティングでも「なんで1位じゃないんだ」と詰め寄って来る人が何人かいました。その時はジャッジシートを見ながら「どこの点が低いからそこを修正すれば1位だったかもね」と丁寧に説明して納得してもらっていたんですが、正直ウザい(笑)。さすがにエントリーするためにしっかり調整してきたクルマの音はどれも良くて、本当に微々たる違いしかないのですから、1位じゃなくてもまったく問題ないと思うんですが、やはり順位がつくと2位なら「負けた」と思っちゃうんでしょうね。そんな状況が、ちょっとイヤになってきたのも事実です。

といいつつ新潟のカー・エンジョイ・フェスティバルなどいくつかのイベントでジャッジをしている僕としては大きな声では言えないんですが(笑)、採点は二の次において現状をより良くするためにはどうすればいいかのアドバイスをメインに考えています。だから採点してすぐに次のクルマに移動するのではなく、参加者と話ができる時間が十分にあるイベントを選んでいます。

そして基準曲。本来なら基準曲なんて決めたくなくて、参加者が好きな曲を入れておいてもらって、それを基準に聴いたほうがわかりやすいんですが、主催者から「課題曲を決めてくれないとお客さんが困る」と言われるので、いちおう「ジャッジの時にはこれを聴くよ」という基準の曲を決めるわけです。ただし1曲だけだとその曲はすごく良いけど他の曲はダメダメということにもなりかねないので、ジャンルが異なる曲をいくつか候補に挙げて、聴いた時に「この人はこんな音楽が好みなんだな」ということを判断できるようにしています。

僕は、課題曲という言い方が好きではありません。と言うのも、音楽を聴く時にいちいち曲ごとにチューニングを変えて聴く人はいないと思うから。しかし、課題曲を決めると、その曲だけ聴いて必死にチューニングして来る人が多いのも事実。だからコンテスト用の特別なチューニングになってしまう人が多いんです。

でも僕は皆さんが普段聴いている普通のチューニングの音を聴いて、それをもとにアドバイスしたいんですね。そのためにも、もし僕がジャッジを担当するイベントに参加する機会がある人がいたら、普段通りのセッティングで参加してください。

また余談ですが、かつて僕は試しにパイオニア・カーサウンド・コンテストに試しに参加したことがあります。その時は課題曲を一切聴かずにセッティングしました。というか、課題曲のCDを持っていなかったんです(笑)。いくらなんでもそれじゃマズイだろうということで、審査当日、CDを借りて聴いてみて「こんなもんでしょ」と言うことで審査を受け、2位の得点を獲得したことを思い出します。

話が取り止めもなくなってしまいましたが、言いたいのは「音楽を聴くのは人それぞれ自由であるべき」ということ。ひとつの基準で審査して順位が与えられて、それを喜んだり悔しがったりしなくても、自分のクルマの音を本人が気に入っていれば、それでOKということです。なにも難しいことはありません。

かと言ってコンテスト形式のイベントを否定しているわけではなく、あのようなイベントは同じ趣味を持つ人々が集まる貴重な場。そこに入り込めば仲間を増やすことができるし、情報交換もできるし、何よりもいろんな音を聴いて次に目指す音が見つかるかもしれません。そのような収穫が、ものすごく多い場所です。

だから、ガチで勝ちに行くみたいなことは考えず、仲間が集まる場所へ行くくらいの気楽なスタンスで参加すれば楽しめると思います。新型コロナウィルスの感染拡大状況にもよりますが、早くおさまってみんなが安心して集まることができる日が来るといいですね。

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