第55回 「パイオニアTS-V174S試聴レポート」
極!石田塾
2024.04.09
実は新潟のイベントに行く前に、山形の天童に寄ってきました。けっして大好きな蕎麦を食べてきたという話ではありません(もちろん、せっかくなので蕎麦は食べてきましたがw)。東北パイオニアで新製品のスピーカーを試聴できる機会をいただいたので聴いてきたんです。
その試聴記は、オートサウンドWebに書いている(https://online.stereosound.co.jp/as/17730452)ので、そちらを読んでもらうとして、7年ぶりのフルモデルチェンジした新しいVシリーズ、すごくいいです。Vシリーズといえば対応車種に手軽に装着できるカスタムフィットスピーカーなので、いくら最高峰といえども、RSシリーズやPRSシリーズのようなトレードイン・タイプではないスピーカーと比べると下に見られてしまうこともあるし、プロショップからしてみると取り付け工賃を高くとれないため「しょせんトレードインじゃん」と敬遠されがちですが、音を聴けばそんなこと関係なく、ぶっ飛びます。とにかく良いんです。
とはいえ、当初は僕もナメていました(笑)。特にツイーターが一般的なバランスドーム型に変わっていた点で、音を聴く前はちょっとガッカリしたのも事実です。従来のツイーターが、RSシリーズのツイーター、TS-T1RSの流れを汲んだデュアルアークリング・タイプでしたからね。だから、普通に戻った感じがして、ちょっとガッカリしたんです。
ただし、これには理由がありました。まず広いサービスエリアを確保したかったことが挙げられます。デュアルアークリングの場合、位置や角度をビシッと調整できれば素晴らしい音がなるんですが、この範囲が狭いために簡単取り付けのトレードインには不向き。その点を考慮して、広い範囲に良い音が届けられるドーム型に変わったわけです。
それともうひとつ。従来のVシリーズはコストの関係上、振動板がアルミニウムでした。今回は、アルミよりも強く太い高域が欲しいのでチタンの振動版を採用することにしたわけです。ただしチタンは高価。デュアルアークリングにするとスピーカー全体の価格がかなり高くなる上に、RSシリーズのツイーターとも差別化が難しくなります。そこでドーム型を採用したのが実情のようです。
はたして、その変更ですが大正解でした。透明感ある高域で、音が洗練されています。同時に従来Vシリーズも比較試聴したんですが、従来Vシリーズの音が「あれっ?」と感じてしまうほど荒く聴こえてしまうんです。それほど、新Vシリーズの音は洗練されていたんです。とはいえ、従来Vシリーズだって、比較試聴しなければ相当高いレベルにまとまっているんですけどね。
しかも低域にも力が増しています。今回のモデルチェンジで注力したもう一つのポイントは低域の再生能力の強化。従来からカロッツェリアのカスタムフィットスピーカーは他社に比べると低域が弱いと言われていて、確かに音程のはっきりした低音が鳴っているものの量感的にはちょっと少ないかなという印象もありました。とはいえ、量感だけあってぶかぶかの低音よりは全然良かったんですけどね。
そのマイナスイメージを克服するために振動版面積を拡大するとともに、トラス構造のフルバスケットタイプのフレームを新採用して剛性を強化。低音の再生能力向上を図ったわけです。その効果もあって、新Vシリーズは全帯域で力が増しています。その上、試聴室で聴いた時と、車内で試聴した時に印象がまったく変わらないのも好印象。よくあるんですよね、デモボードではよく聴こえたけど、クルマに装着すると全然印象が違うスピーカーって。それがまったく無く、どちらも同じ印象の良音が楽しめるんです。
新しいCシリーズも同時に聴いたんですが、こちらも低域の再生能力のアップを図っていて、車載状態では力強く素晴らしい音がしていました。実は最初、試聴室で聴いた時はやや物足りなくて「んっ」と思ったんですけどね。その後、車載で聴いたら音は激変。フロント2ウェイのみのシンプルなシステムでしたが「サブウーファーなんて要らないじゃん」と思えるほどの力強い音が車内の展開していました。振動版の拡大と同時にマグネットも大きく重くなったのと、29mmと大型のツィーター を採用しているあたりが効いているのでしょう。
こちらは3万円台のカスタムフィットスピーカーなので、専門店で買う人は少ないかもしれませんが、手軽に良い音で音楽を楽しみたいという音楽ファンにとっては絶好の1台です。これに替えるだけで、いきなり音楽が楽しくなる感じ。それを味わって見るのはいかがでしょう。