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コラム

第十三回「自粛生活の楽しみに」

極!石田塾

2020.05.19

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発令され、みなさん、家にいる時間が長くなっていると思います。家の中でどのように過ごすかに、みなさん苦労していると思いますが、リラックスするのには音楽を聴くのもいい手段です。

今、多くの人が家にいる時間が長いおかげで、FacebookなどのSNSでバトンリレーが流行っているようです。アルバムのジャケットだとか本のブックカバーだとか、簡単な料理とか身体を鍛えるエクササイズとか。普段はバトンが渡ってきてもスルーするのですが、今回はひとつだけやってみました。「10日連続で自分の聴覚に多大な影響を与えたレコードのアルバムカバーを1日1枚投稿してゆく」というものです。

これ、自分の音楽ライフを振り返るのに良い機会になりました。僕があげたのは古い順から井上陽水の「氷の世界」、レッド・ツェッペリンの「プレゼンス」、コロシアムIIの「ウォーダンス」、じゃがたらのシングル「タンゴ」、The Pop Groupの「Y(最後の警告)」、ジュリアン・コープの「フライド」、ピーター・ヌーテンとマイケル・ブルックの「SLEEPS WITH THE FISHES」、The Sundaysの12インチ・シングル「 can’t be sure」、デヴィッド・トーン/ミック・カーン/テリー・ボジオの「ポリタウン」、バルトロメイ・ビットマン「Dynamo」の10枚です。

井上陽水は小学生の時に初めて自分のお小遣いを貯めて買ったレコード。たぶん、これを聴いていなかったら、今ほど音楽好きにはなっていなかったという意味では、僕の人生を作ったレコードだと思います。当時、知り合いのお兄さんから古いガットギターをもらったこともあり、必死にコピーしていたのを思い出します。

ツェッペリンは中学生になり初めて買った洋楽(死語)のレコードです。この頃はディープ・パープルとツェッペリンがハードロックの2大バンドで、どっち派かで争っていたのですが、僕は「天国への階段」が好きでツェッペリン派。で、リアルタイムで新譜を買った初めてのツェッペリンのレコードが「プレゼンス」だったわけです。当時はバンドを始めた頃で、そのときのドラマーはみかん箱を叩いて練習していたので、プレゼンスに入っている「アキレス最後の戦い」という曲名を聞くと「みかん箱を思い出す」と言っていました(笑)。

コロシアムIIは、高校生になってギターの速弾きにハマり出して買ったレコードです。コロシアムIIのギタリストは、当時、速弾きギタリストとして名を馳せ始めたゲイリー・ムーア。カセットにダビングしてコピーしていたのですが、当時のオーディオ・システムでは細かい音が聴き取れなくてあえなくコピーを断念。このあたりから、もっと良いオーディオが欲しいと思い始めました。

東京に来てからは、まずライブハウスにハマりました。当時住んでいたアパートにわりと近かったので、よく通ったのは渋谷の屋根裏というライブハウス。ここで見たじゃがたらには衝撃を受けました。いま考えると、低音好きになったのはこの頃、PAスピーカーの目の前で、音楽をガンガン浴びていたからかもしれません(笑)。それにしても「タンゴ」のB面は「Hey Say!」。昭和の時代にヘイセイですから、時代を先取りしていましたね。

そしてパンクとかポストパンクあたりのマイナーな音楽を聴き始めます。まずThe Pop Group。このアルバムは「ロック史上、最も攻撃的」と言われたアルバムです。とにかく攻撃的。今聴くと、じゃがたら初期の凄さに似たところもありますが、衝撃的なアルバムでした。

この頃は20歳代前半から半ばの頃ですが、やはりこの頃の音楽が今も影響を受けている気がします。この頃は友人の影響もあってポストパンク〜ネオサイケにハマっていた頃。そこで衝撃を受けたのがジュリアン・コープです。なにに衝撃を受けたかって、亀の甲羅をしょって歩くジュリアンのミュージックビデオ。今はなぜかYouTubeからも消えていますが、このヘンさが衝撃でした。当時、仕事を始めた頃で、友人のライターさんがインタビューすると言うので同行したら、はだかの上半身にサイケなペイントをして現れてビビったのを今でも思い出します(笑)。

この頃はオーラサウンドのアンプにセレッションのスピーカー、デンオン(現デノン)のプレーヤー、アカイのカセットデッキという組み合わせで音楽を聴いていました。それをグレードアップしなきゃなぁと思わされたのがピーター・ヌーテンとマイケル・ブルックのアルバムです。

このアルバムは4ADというレーベルが出したもの。当時、コクトー・ツインズのエリザベス・フレイザーの美しい声に惹かれたのと23エンベロープがデザインするジャケットの素晴らしさのおかげで4ADのアルバムはよく入手していました。このアルバムも完全にジャケ買いです。

で、再生してみたらある曲で針が飛ぶんです。何度も。キズかなぁと思いましたがキズはついていない。不思議に思っていたら溝の幅が大きくてピックアップの動きが激しかったんですね。それで、当時使っていたプレーヤーでは対応できなかったようです。その時は針圧を思いっきりあげて聴いていましたが、ある日、高級プレーヤーで再生する機会があり、かけてみたらピックアップの動きは大きかったもののすんなり再生。ダイナミックレンジが広く深い低音に驚いたものです。いつかは高級なオーディオを、と思った瞬間です。

The SundaysはThe Smithsなどの影響でネオアコにハマり始めていた時に出会いました。The Smithsといえばラフトレードというレーベル。そのレーベルから出た新人ということで試しに買ったんですが、声が実にかわいい(笑)。ひと聴き惚れです(笑)。レンジが狭く音はそんなに良くないレコードだったのですが、声にヤラレました。2枚目のアルバムからレーベルを移籍し、3枚目は音も良く愛聴盤になりました。今でもBBCの6 Musicでたまにかかるので、The Sundays好きは世界中でけっこう多いみたいです。

次のデヴィッド・トーン/ミック・カーン/テリー・ボジオ。これは元ジャパンのミック・カーンの独特のベースがジャパンの最後のアルバムあたりから好きで、その後、元バウハウスのピーター・マーフィーと作ったダリズ・カーのアルバムも買ったのですが「へぇ、ミック・カーンってこんなこともやってるんだ」と思って何気なく買ったアルバム。これがとてつもなくカッコよかった。

とにかく重い。そしてドラムスが力強い。オーディオ的にも素晴らしい録音で、聴きごたえのあるアルバムです。この頃はオーディオ評論家の井上良治氏がフォステクスのユニットを使って設計したヴァーチカルツインのスピーカーを使っていましたが、このスピーカーが速さも重さもしっかりと出してくれていて、ついつい隣人に怒られそうな大音量で聴いていたものです(笑)。

そして10枚目にあげたのが、バルトロメイ・ビットマン。本来なら、まだまだ聴覚に多大な影響を受けたアルバムはいっぱいあるのですが、最終日は間をはしょって最も新しいお気に入りを上げようと思ったからです。

この2人は、ミュージックプラントのブログで見つけたものです。ミュージックプラントは以前、ロビン・ヒッチコックのライブを手掛けたころから信頼できる音楽事務所。代表の野崎さんのブログもたまに読んでいます。で、バルトロメイ・ビットマンはウィーン・フィルに在籍するチェロ奏者のバルトロメイと、バイオリン&マンドラ奏者のビットマンのデュオ。というとクラシック? と思うでしょうが、これ、プログレです。

演奏もすごいし、曲もカッコ良い。チェロやバイオリンといったいわゆるボウイング奏法の擦弦楽器がメインのアルバムを買ったのは、もしかしたら初めてかもしれません(笑)。そういう意味でも聴覚に多大な影響を与えたアルバムです。

このように、自分の音楽の歴史を振り返ってみると、その時々に影響を受けたアルバムがあったことにあらためて気付かされました。同時に、この新型コロナ禍の中で、音楽が好きでよかったとしみじみ感じます。外に出られなくて家の中でじっとしていても、音楽を聴いていれば心が和らぐし、何時間でもずっと聴いていられます。だから僕は、家にいるのがツラいなんて感じることはありません。

みなさんも、家にいるのがツラいと感じたら、自分の聴覚に影響を与えたアルバムを振り返ってみて聞き直してみるのはいかがでしょうか。家で聴くのに飽きたなら、クルマの中でカーオーディオで聴く手もあると思います。外に出て観光したら、ウイルスを拾ったり他人にうつしたりする危険性もありますが、ずっとクルマの中で音楽を聴いているだけなら危険性はないと思いますので。そして同時にカーオーディオの音が家で聴くのと比べてどう違うのかを考えてみる。それがグレードアップの助けになることでしょう。

時間がある今だからこそ、音楽をいっぱい聴いて安らぎながら、同時にカーオーディオのグレードアップを色々と考えてみる。そんな時間にしてみてはいかがでしょうか。

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