第二十八回「サウンドミートイン東日本いわき2021」※画像に表記されている日程は、延期、変更されています。
極!石田塾
2021.08.24
開催前には中止や延期を望む声も多く、半ば強行的に開催された東京五輪ですがやっと終わりましたね。個人的にはコロナ対策も暑さ対策も不完全なままでの開催には反対だったし、五輪貴族の金儲けのためのイベントに過ぎないと分かった時点で興味を失ってしまいましたが、金メダルにラッシュに歓喜した方も多いかと思います。それは人それぞれあって良いと思います。
今回の五輪では開催直前まで、いろいろとゴタゴタがありましたね。個人的に驚いたのは小山田圭吾問題。まず驚いたのが、小山田が五輪の音楽に関係していたことです。ロッキンオンの記事は当時読んでいて、あまりのひどさにゲロを吐きそうになったんですが、そりゃ五輪の音楽を担当したらいじめ問題を蒸し返されるって、と思った途端に大問題になり辞任ですからね。そもそも五輪の音楽を担当したこと自体が間違いだったんだと思います。
とはいえ、彼の音楽センスは大好きです。フリッパーズギターの頃は、小洒落た音楽だなあ程度にしか思っていなかったんですが、コーネリアスになってからは大好き。確かに小中高校時代のいじめを大人になってから自慢げに話していたのは言い訳できませんが、それと音楽センスは別。だいたい五輪の音楽を担当したからこうなったわけで、五輪に関わっていなかったら知っている人だけが知っている問題だったわけですね。
だから彼の応援の意味も込めて、10月3日に福島・いわきの道の駅よつくら港隣海水浴場駐車場で行われる予定のサウンドミートイン東日本いわきステージの基準曲のひとつに、コーネリアスのフィットソングを選びました。コロナ禍が長引いていますが、季節性要因もあるので10月にはおそらく落ち着いてきて開催できるでしょう。
そこで今回は、他の基準曲も含めてここで紹介していこうと思います。おそらくいわきのイベントに愛知県方面から参加する人もいないでしょうから(笑)先出ししても大丈夫でしょうという判断です。
このフィットソングは2006年に発売された「Sensuous」(センシュアス)というアルバムに収録されています。もう15年も前のアルバムですが、いま聴いても古い感じはありません。という意味でも、名作と言っていいでしょう。
そしてなにより興味深いのは、このアルバムから24bit録音に変更したこと。発売当時はCDしか出ていませんが、レコーディング時の情報量アップが表れていて、高音質なアルバムに仕上がっています。その後、2014年にはハイレゾ音源が出ているので、こちらは本来のレコーディング音質そのものと言っていいでしょう。
この曲をカッコよく聴かせるポイントは、一にも二にも音離れの良さです。まあ、オーディオにとって音離れの良さは高音質再生の基本中の基本ですが、音離れの良さが聴こえかたを左右する曲はなかなかありません。ギターのカッティング、左右に飛び交うシンバルの音、バスドラムのアタックと響きなど、音離れが良ければハッとする瞬間がいくつもあるし、逆に悪ければ普通に聴こえてしまいます。
この曲以外にも、アコースティックギターで始まる1曲目のSensuousから名曲揃い。素晴らしいアルバムなので、ぜひ聴いてみてください。そうそう、この曲の出だしはぷりギャップが収録されていて、なかなか始まらないんですよね(笑)。ハイレゾ配信版ではカットされていますが。
2曲目に選んだのは、以前もこのコラムで紹介したことがあると思いますが、エイドリアン・レンカーの「Songs」の中のZonbie Girlという曲です。エイドリアン・レンカーはビッグ・シーフというアメリカのインディーバンドのヴォーカル&ギターで、4ADというレーベルに移籍して出した「U.F.O.F.」というアルバムは、2020年のグラミー賞のオルタナティヴ・ミュージック・アルバム部門にもノミネートされているんですよね。こちらも良いアルバムです。
全員がバークリー音楽大学出身で、彼女のソロアルバムはコロナ禍によってワールドツアーが中断された時に山小屋にこもりレコーディングしたそうです。特徴はすべてアナログ機材のみでレコーディングされていること。たぶんオーバーダブしているんでしょうがZonbie Girlでも鳥の声などの環境音が入っていて、自然の中で録っている雰囲気が伝わってきます。
Zonbie Girlはアルバムの中でも特にオンマイクのセッティングで録っているようで、声の生々しさが伝わってきます。いわば、コーネリアスとはまったく逆のアプローチで録った音ですが、自然の中で録っているいる雰囲気と生々しさが伝わってくると最高です。
これまで古い曲やマイナーなアルバムを選んできたので、もう1曲、有名どころを追加しておきました。上原ひろみとエドマール・カスタネーダの「ライブ・イン・モントリオール」からジ・エレメンツ:ファイアーです。
このアルバムは確か昨年も基準曲に選んでいたはずなので、昨年も参加していれば持っている人が多いと思います。イベントの度にアルバムを何枚も買うのも大変でしょうしね。ここは昨年の流用です(笑)
彼女たちの演奏は、数年前にブルーノート東京で見ています。ステージの向かって右側のエドマール側で見ていたんですが、もう釘付けでしたね。ハープってこんな弾き方ができるのか! って感じ。あっという間に終わってしまいました。
上原ひろみはやはり激しい演奏が似合いますね。本当に楽しそうに、笑顔で鍵盤を叩いています。という意味では、僕はロックなミュージシャンとして認識しています。そしてアルバムを聴くと、真正面の特等席で聴くとこうなのかと、あらためて思います。その時のライブ感が伝わってくるかが決め手になるでしょう。そのためには、やはり情報量と音離れの良さが、オーディオ・セッティングのポイントですかね。
ところで、この手のカーオーディオ・イベントでは、事前に聴きどころなどを提示して欲しいとよく言われます。が、僕はそれは出さないようにしています。というのも、何に対しても感性は人それぞれだから。音楽だって、グッと惹きこまれるポイントは人によってこれぞれ異なると思うからです。
個人的には、この音をこう出して欲しいというのはそれぞれありますが、それを提示してしまうと自由な音楽再生に影響を与えてしまうと思うので、そこはあえて言わないようにしています。その代わりに、ユーザーが音楽を聴き込んで「僕はこの音をこのように出したいからこのようにセッティングした」ということを事前に僕に伝えて欲しいんです。
そして、その意図通りにチューニングできていたら、当然点数は上がりますし、言ってることと出ている音が全然ちゃうやん(なぜ関西弁?w)となったら、点数は低く抑えられます。このように、型にはまったセッティングをするんじゃなくて、普段聴いている好みの音で参加することを望んでいます。音楽もオーディオも個人の趣味なんだから、人がなんと言おうと自分が満足していたらそれが最高! もし参加者が読んでいたら、僕のコースに参加するならそのような姿勢で来てくださいね。