第三十四回「オーディオの自由度を上げるテクニック」
極!石田塾
2022.02.20
今回は、マイカーに取り付けたオーディオシステムについて話をしようと思います。実は今、僕は父の介護のために秋田の実家にいます。で、雪深い秋田では四駆が必要だろうということで、安いスバルR2の4WDを手に入れたんですね。
どうせ父親を病院へ連れて行ったり、近所へ買い物へ行くだけなので、オーディオは交換しないつもりだったんですが、クルマを手に入れて音を聴いてみたら、これがしょぼい(笑)。即座に、こりゃ交換しなきゃと思ったわけです。
ただし大掛かりにクルマを改造するつもりはなかったので、当初はトレードイン・スピーカーに代えて簡単に済まそうと思っていたんです。ところがR2の純正スピーカーは、ダッシュボード上の左右両端にあるだけなんですね。つまりフロントドアにはスピーカーの設置場所がありません。交換時に外してみたら、12cm程度の小さいものでした。これだとトレードインしても低音が物足りないのは目に見えていたので、さてどうしたものかと悩んだ結果、カロッツェリアのCSTドライバー、TS-HX900PRSをダッシュボード上に置いて、足りない低音は助手席足元に置けるコンパクトなサブウーファー、TS-WX010Aを加えるという変則的な構成にしたんです。
カロッツェリアのCSTドライバーの実力は、昨年末のオートサウンドWebグランプリの試聴時にリファレンス機としても使用して十分に知っていましたし、分解能の高さ、レスポンスの良さ、音の正確さ、そしてなんと言っても位相特性の良さで僕の好みにも合致していました。ただし心配なのは、はたしてTS-WX010Aの音ときちんとつながるのか? ということ。これはかけです。
ただ、以前ETANI ONEの試聴で、CSTドライバーとサブウーファーの組み合わせを聴いたことがあり、まったく違和感のない音を出していたので、うまく調整すればいけるのでは? と思ったわけです。
取り付けは、オートサロンへ取材に行ったついでに、東京のグランドノートにお願いしました。なにかトラブルが起きた時にすぐに対応してもらうためにも「ショップは日常の行動範囲内で選ぶ」を持論としていましたが、秋田では近所にお店が見当たらないため、以前からお世話になっているグランドノートにお願いしたわけです。当初はD.I.Yで取り付けようとも考えましたが、雪かきが大変でそれどころじゃなかった(笑)のと道具が足りなかったこともありお願いすることにしました。結果、大正解でした。
CSTドライバーは当初、純正グリルの中に隠して外からは見えないようにとも考えたんですが、そうするとユニットがほぼ水平になってしまい、ガラスからの反射波を聴くことになってしまうのと、ユニットの前の遮蔽物はできるだけ無くしたいとの理由で、純正グリルに穴を開けてそこに嵌め込むスタイルを取りました。ただしリスナーと正対する角度に立ててしまうと前方視界に死角ができてしまうため、前方を遮らないギリギリのところまで寝かせています。
この作業を見ていたら、まさに職人ワザ。レーザーカッターで穴を開け、ヤスリで少しずつ穴を広げながらユニットを嵌め込んではヤスリをかけてを繰り返し、狙った角度に収めて行きます。固定は、裏側からブチルテープで止めているだけなんですが、ガッチリと固定されているように見えると思います。
サブウーファーは、説明書通りに取り付けると、フロアの吸音マットの上に両面テープで貼り付けるということになるんですが、ボードを1枚用意してそれにビスで固定することにしました。というのも、以前から「スピーカーは固定強度が重要」と言っているし、このサブウーファーがプレッシャーボード・タイプで床へ反射した音を車内全体に広げる方式のため、ユニットの正面に当たる部分はなるべく音を反射しやすい硬い材質が良いと思ったからです。
ヘッドユニットはサイバーナビかなぁと思ったんですが、秋田でサイバーナビのような高性能ナビは不要だろうから(笑)ディスプレイオーディオのDMH-SF700にしました。ハイレゾの再生ができるし、Apple CarPlayでナビもします。車載Wi-Fiルーターも積んだのでAmazon FireTV StickをHDMIに接続して、FireTVも楽しめます。10年以上前のクルマが、一気にハイテクマシンに変身です(笑)。
さて、肝心の音ですが、これがなかなか自然に鳴ってくれています。当初心配していた、音のつながりも、ほとんど問題なし。厳密に言えばサブウーファーのローパスフィルターをオフにできないため、どんなに高い周波数に上げてみても125Hzでフィルターがかかってしまうため、その周辺の音圧がやや薄くなってしまっているんですが、それよりなにより、すべてのスピーカーがリスナーの前にあることの自然さが優っています。
たとえば以前乗っていたフォード・フォーカスなんかは、一所懸命調整してなんとか違和感のないレベルまで低音を合わせたんですが、それでもサブウーファーがラゲッジルームにある感覚は拭えませんでした。ところがR2はなにも調整しなくても、ベースがしっかりと前のセンターにいるんです。これには驚きました。
CSTドライバーの解像度の高さにも大満足です。位相にズレのない構造のため、へたにタイムアライメントなどはいじらずにそのままである程度の定位感が得られるし、メジャーで距離を測ることなく、音を聴きながら少しずつ調整しただけで、ボーカリストが目の前にビシッと現れるようになります。その定位感の良さったら、これまでさんざん必死に調整して合わせてきたのがバカらしく思うほどの簡単さです。
もちろん、CSTドライバーに比べれば低音のクオリティは低く、もっと音階がはっきりすればなぁと思うこともあります。また、そもそもローエンドまで出ているわけではないので、もっとローエンドが出たらなぁとも思います。しかしベースラインはしっかりと出ているので、僕が好んで聴いているロック系の曲には十分。その楽しさにすっかり騙されています(笑)
当初は、ご近所を走るだけのクルマとして使うつもりだったんですが、かなり楽しいクルマに仕上がったので遠出することも増えました。先日はオートメッセ大阪のために、このクルマで出かけてきたんですが、楽しくてもシートが辛いですね(笑)。次はシートの交換? と思いつつ、楽しいクルマに満足しています。